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野草・野鳥・風景写真集


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宮城谷昌光「三国志」

宮城谷昌光の単行本「三国志」(文藝春秋社)がようやく完結を迎えた。この小説は、「月刊文藝春秋」に2001年5月号から2013年7月号までの12年余の長期にわたって連載されたもので、単行本としては2004年に第1巻が同社から発刊され、2013年9月、第12巻をもって完結した。因みに文庫本は「文春文庫」により2008年1月に第1巻が発刊され、現在、第8巻まで刊行されている。

私がこの本を手にしたのはまだ現役で働いている頃で、彼の小説はその殆どを読み終えていたこともあって、後日文庫本化されることが分かっていながらそれまで待つことができず、単行本の1巻から3巻の発刊と同時に一挙に買い求めた。ところが、後でこれが1年に1冊ずつしか刊行されないことを知り、そんな気の長い話だと翌年に次巻が発刊される頃には前巻に何が書いてあったか忘れてしまうので、発刊間隔の短い単行本にすべきであったと悔やんだ。と言っても後の祭り。以後は毎年9月に出版されるのを首を長くして待つ結果となった。

「三国志」はいろいろな作家が手がけており、その内容もバラエティーに富んでいる。私が読んだ本だけでも、吉川英治「三国志(全8巻)」(講談社)、今戸栄一「超三國史(全3巻)」(光栄ノベルズ)、童門冬二「新釈三国志(全2巻)」(日本経済新聞社)、北方謙三「三国志(全13巻 + 別巻1)」(ハルキ文庫)、宮城谷昌光「三国志(全12巻)」(文藝春秋社)と、作家にして5人、本の冊数は39冊にものぼる。この他にも三国志にまつわる小説として、陳舜臣「諸葛孔明(全2巻)」(中央公論社)、同「曹操」(中公文庫)を読み、今思えば「よくもこれだけ読んだものだ」という感慨を覚える。

なぜこれほどまでに三国志に魅かれるのだろうと考えてみると、まず物語のスケールの大きさ、登場人物の多彩さ、変化に富んだ内容などを挙げることができる。三国志には大別すると、中国・西晋代の陳寿の撰による「正史(歴史書)」と、中国の明代に施耐庵あるいは羅貫中の手によるものと伝えられる「三国志演義」を底本とするものがあり、前者はほぼ史実に忠実に書かれたものとされる。後者は時代小説・通俗歴史小説であり、言わば講談本の類とされる。日本の作家によって書かれた三国志の多くは「三国志演義」が底本であり、吉川英治の小説がその代表的な作品である。

「三国志」の時代背景となっているのは、中国の時代区分で後漢末期(184年~220年)から西晋による中国再統一(280年)までの動乱の時代である。黄巾の乱の蜂起に端を発して権力の争奪合戦が始まり、220年に曹操の死後、その息子の曹丕が当時の皇帝であった献帝より禅譲を受けて皇帝(文帝)となり、魏を建国。劉備もこれに対抗して221年に皇帝に即位し、漢の後継者と称して(蜀)を創設。さらに8年後の229年には呉で孫権が皇帝を名乗り、皇帝が同時に三人並んで「三国」が鼎立することになり、三国時代が始まった。

さて、宮城谷昌光の「三国志」はどのようなものか。多くの三国志が黄巾の乱(中国後漢末期の184年に太平道の教祖張角が起こした農民反乱。目印として黄巾と呼ばれる黄色い頭巾を頭に巻いた事から、この名称がついた。・・・Wikipedia)から筆を起こしているのに対して、その遥か以前、曹操の祖父を描くところから物語が始まる。第2巻の半ばになってようやく黄巾の乱に至った。この調子ではとんでもない長編小説になりそうな予感がした。読み進むにつれて今まで読んだ三国志物とは全く異なり、時代背景や登場人物の描写に多くの頁を費やしており、これは小説ではなく史伝ではないかと思えて来た。

最近読んだ北方謙三の三国志では、これも「正史」が底本とされているが宮城谷昌光のものとは似ても似つかない。こちらは彼独特の歯切れの良い文章で、戦闘シーンがふんだんに織り込まれ、痛快時代活劇といった内容になっている。どちらが良いというわけでもないが、エンターテイメント性に富んでいることだけは確かだろう。もっとも、史伝的歴史小説と単純比較すること自体に無理はあるのだが・・・。

物語の内容を見ると、「三国志演義」を底本とする三国志では、劉備が善玉、曹操は悪玉として描かれているものが多いが、宮城谷は曹操を相当な人格者として描いている。結果的にみれば、だからこそ魏が最後まで残り、中国の統一を成し遂げて「晋」という国を創り得たとも言えよう。また諸葛孔明ヤ映画にもなった赤壁の戦い(レッド・クリフ)についても宮城谷本での状況描写はあっさりしたもので、その点でも肩透かしをくったという印象をもった読者もおられるのではないか。

宮城谷がこの本を執筆するにあたっては、年表の作成や資料の整備などの準備に10年を費やしたというだけあって、よくもまあこれだけ調べ上げたものだと感心する。彼はこれまで古代中国、特に春秋・戦国時代の小説を多く手がけ、知識量も豊富なだけにこれだけの大作を書き得たのだろう。今回、三国志全巻が出揃ったのを機に、再度最初から読みなおしてみたい気もするが、現在のところまだそれだけの気力が湧いてこない。いつか、そのうちに・・・。
by shun_photo | 2013-09-21 11:27 | 読 書