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野草・野鳥・風景写真集


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海音寺潮五郎「幕末動乱の男たち」

大仏次郎著「天皇の世紀(文春文庫・全12巻)」をようやく読み終えた。第1巻を手にしてから実に半年を要した。この本のことで前回にも触れたが、とにかく読み辛いというのが率直な感想。それでも第8巻の「大政奉還」あたりからは緊迫感もあって徐々に読むスピードが上がってきた。とくに戊辰戦争に入ってから情景描写が増えてきて多少読みやすくなっている。

この稿のテーマは海音寺潮五郎なのになぜこんなことから書き始めたかというと、「天皇の世紀」の第12巻を買い求めようと書店に出かけたところ、あいにく欠品で取り寄せてもらうことになった。何か他の本でもと思って書棚を漁っていたら、海音寺潮五郎の「幕末動乱の男たち(全2巻)」(新潮文庫)が目に止まった。この本は、ちょうど「天皇の世紀」と同時代を生きた明治維新に関わりの深い人物を扱った史伝であり、別の観点から明治維新の実像を探ることができそうと考えたのがこの本を読む契機となったからである。

本の内容は、幕末に活躍した12人を列伝風にまとめたもので、登場人物は、有馬新七、平野国臣、清川八郎、長野主膳、武市半平太、小栗上野介、吉田松陰、山岡鉄太郎、それに三剣客伝として、田中新兵衛、岡田以蔵、河上彦斎の12人。この名前を見ると、明治維新の立役者と言うには比較的マイナーとも言える人物も混じっており、西郷隆盛、坂本竜馬、勝海舟のような大物が見当たらない。本の解説を読むと、当初はこれらの人物についても書かれる予定であったらしいが、なんらかの都合でとりやめになったということのようである。

「天皇の世紀」と「幕末動乱の男たち」の大きな相違点は、前者が時系列に沿ってその時代に起きた様々な事象とそこに生きた人間がどう関わってきたかを描いているのに対して、後者は個々の人物を中心にその生き様を描いていることである。また、前者があくまでも資料に基づき事実を忠実に再現しようとしているのに対して、後者はときに私見を交えて分かりやすく人物像を解き明かそうとしている点にある。

とはいいながら、海音寺潮五郎が時代背景の描写をおろそかにしているわけではなく、彼が数多く手がけた西郷隆盛を題材とする小説では、「幕末・明治維新という『時代』そのものを描かなければ、真の西郷像は描くことが出来ない。伝記というものは人物だけを書いていてはダメだ。その時代背景を書かなければ、真の人物像は浮かび上がってこない」と考えていたように、時代背景を描くことの重要性を説き、歴史の真実を伝える史伝文学の執筆に精力的に取り組んでいる。

さらに、大仏次郎が「天皇の世紀」を執筆する中で歴史的史料を引用するに際して、ほぼ原文に近い文体を用いたのに対して、海音寺潮五郎は古文書や手紙類の史料を一般の読者が読み易くするため、労をいとわず全て現代語訳して書くなど、読者に対して十分な配慮をしている。これも史伝文学の復興を志した彼の情熱が並々ならぬものであったことの証左であろう。

彼の本はこれまで、「西郷隆盛(全5巻)」(角川文庫)、「天と地と(全3巻)」(文春文庫)などを読んできた。「天皇の世紀」や「幕末動乱の男たち」を読んで史伝文学に少なからず興味を覚え、現在は海音寺潮五郎の「武将列伝(全5巻)」(文春文庫)、「悪人列伝(全4巻)」(文春文庫)を読み始めた。史伝文学は、フィクションの要素を排除し、詳細な文献調査などをもとにして、歴史の真実を明らかにしようとする形態のものだけに説得力があり、一般の歴史小説とはまた一味違う面白さがある。
by shun_photo | 2012-09-18 08:02 | 読 書